子供達が主体的に取り組める時間と場の提供
そこでの大人の関わり方を考え続けていきたい。
長野県ソフトボール協会 指導者委員長・国体対策PROJECT委員長・長野県成年男子監督
荒井政弘さん
長野市中学校女子ソフトボールコーチ
飯島哲也さん
埼玉で開催された「スポーツコミュニケーションBSIC 1研修」に参加した 長野県ソフトボール協会の荒井さんを訪ね 長野県にある屋内練習場にてお話を聞かせていただきました。
ここはチームとしての練習ではなく それぞれの学校・部活やクラブの外に個人として週に1回のペースで集まり、ソフトボールのピッチングを中心に練習する、ピッチング練習会です。
メンバーは 高校生の男女(今日は試験期間中で来ていませんでしたが) 中学生、小学生の女子です。
長野県の冬は雪が積もるので こうした練習場所を確保するのも大変だそうです。平成10年から、ソフトボールのレベルアップには、良いピッチャーを育て上げることが必要だと考えてこの練習会を始めたのですが、4年ほど前に、これで良いのだろうか? と思ったことがあったそうです。
「教えすぎによる弊害」
投げたボールが高く浮くと、こちらを見る。低くなるとまたこちらを見る。完全に教わりに来ちゃっているんです。こんな受身で指示待ちの選手を育てるような練習をしていていいのだろうか。子供達の試合を見ても、何と大人の指示が多い事か。子供達への関わり方はこれで良いのだろうかと疑問を持つようになりました。
そこで、少し乱暴ですが、ピッチングに必要な材料だけを提供して、それを自分の頭でつなげて完成させるのは、自分自身だよ。というスタンスに切り替えました。もちろん、ただ黙って見ていれば良いわけではありません。
あれこれと手法を模索している矢先に目に飛び込んできたのが「スポーツコミュニケーションBASIC1研修」でした。そこでは、これからの方向性を再度確認する事が出来たと同時に、選手が自分で考えて取り組む原理原則を教えていただきました。
「確かにそうは思うけれど、具体的にはどうしたら良いのか解らない」そう思っている指導者が多いと思います。指導者も自分の殻を打ち破るきっかけと、具体的な知識が必要だと思いました。 荒井さんは語ります。
ノルマをこなす練習ではなく、自分の現在を知り、その為に何をすべきかを考え、だから 今日はこういう練習をしようと集まってくる。これがピッチング練習会の目指す姿だ。
長野県ソフトボール協会の指導者委員長として、指導者の養成にも関わっているので、ここでの実践を指導者の皆さんに提供することも役割の一つとして考えています。
今だけの結果ではなく、将来を見据えた指導をどのように理解してもらえるのかが鍵になってきます。もしかしたら、それは数年先でないとわからないものかもしれませんが、その子の人生にとって必ず力となる。それが世間にわかってもらえれば、やはりスポーツをやらせるべきだと勧める保護者も増えてくると思っています。
荒井さんは 成年男子の監督もやっているので、大人を見て思う事もあるそうです。
成年チームには、もっと自分たちで新しいものを作り出していくような選手になってもらいたい。私たちには無いもっと斬新な発想が出てくるはず。自由な発想を自由に使って、私たちが考えられないようなものを開拓して欲しいと思っているんです。
そんな選手の基礎づくりも、やはりこの小学生・中学生時代が大事になってくるんじゃないかなと思うんですよね。
僕はチームでのコーチをしているのですが、チームのコーチだと、わかっていても教える事が多くなってしまう。 荒井さんに教えすぎないように言われ、最近は気をつけるようになっているんですけど、でも教えたくなっちゃう。(飯島さん)
根本的に日本の試合はトーナメントなので負けたら終わり。となると、一定の選手を使いたくなるし、早く教えないと、となるし、公式戦から逆算すると、どうしても そう考えちゃう。 もっとその先の指導とかしないと とは思うが、おろそかになる嫌いがあるんですよね。
荒井さんに教わって今は原石でいいんじゃないか と考えるようにしている(飯島さん)
そうしないと動けない選手になってしまう。怒られないと、ピリッとしない。 コーチも怒らないと緊張感がないと思っている。全体として、ピリッとしたものがないと動けない。
要するに、他の方法を知らないんですよね。まさにコーチングがオススメだと僕は思います。
選手が厳しい顔して練習しているとコーチは満足する。「やってるな!」という気持ちになる。ニコニコしてやっていると「何笑ってやっているんだ!」と そう感じてしまうんですよね。
実際には、ニコニコ笑いながらやっていても、なにか感じたり、「あっ」 掴めた! 発見があった!とかは、わかると思うんですね。荒井さんは旧態然とした現場についてそう感じています。
ここでは即効的な事ではなく、考え方というか、学び方を学ぶ。
僕らの時代は、教える人もいないし、ビデオも動画も何もないから、技術を身につけるのに、上手な人のフォームを後ろから見たり、前から見たりして自分で観察して覚えたものです。それと同じような場面を意識的に作るようにしています。
研修で学んだ「GROWモデル」の質問を活用して 目標はどこなの? 現在地はどこにいるの? どんな方法で? と行動を促進する形を早速取り入れていきたい。押し付けではなく、選手が自分の成長を実感できたらいいのかな。 そう話してくれました。
自分の顔ばかり見ている事に気がついて、これではいかんと思った4年前。このやり方は、ダメなんじゃないか、その感覚を信じて少しづつ変えてきた。
チームの立場に立つと目先の試合とか大会に目が行ってしまい、子供達が気がつく前に答えを与えてしまいます。成人の選手を見ていても、なんで自ら道を切り開こうとしないのだろうか? と感じることがあります。
逆算して たどり着いた、この世代と練習方法。
子供が主体的に取り組める時間と場の提供。指導者として、技術を身につけるための様々な練習方法を作り出すと同時に、そこでの関わり方をこれからも考え続けて行きたい。
子供達が自由に会話する時間もOK。 黙々と投げ込むも事もOK。 楽しくて笑顔が溢れるのも勿論OK。 試合で上手くいかなかったら、ここにきて出直せばいい。
荒井さんと飯島さんは、子供たちを見つめながら にこやかに語ってくれました。
今回、インタビューに来て、なんだか スポーツの原点を見ているような思いがしました。
スポーツって 楽しむものだったよな! 改めてそう思わされた長野でのインタビューでした。
これからも 荒井さん、飯島さんの活躍を期待しています。
荒井さんとの「縁」で、3/10 諏訪市 ソフトボール協会にて「スポーツコミュニケーション」についてお話をさせていただく事が決まりました。
みなさんとお会いできることを楽しみにしています。
皆さんも どんどん僕を呼んでください。皆さんの街で、チーム、メンバー、仲間たちがスポーツコミュニケーション」について、共有できるようにお話をしていきたいと思っています。
インタビュー:詫摩浩一 カメラ:詫摩世都子