「真似るは学ぶ」指導者インタビュー No.5

近代5種は 選手が考える力を持ち

チームとして機能しなければ世界では勝てない

 

日本近代五種協会 理事 清水康さんに 千葉県でインタビューをさせていただき その後、海上自衛隊内の体育施設他を見学させてもらいました。

近代五種とは フェンシング、水泳、馬術、ランニング、射撃の5種類を指し、それを1人の選手が1日で全てやる競技なのです。2012年より射撃がレーザー銃に変わりましたが それ以前は実弾を使用していました。

その為、銃刀法の兼ね合いもあり日本では、選手が自衛隊員か警察官に限定され、なかなか普及する事ができなかったのですが、世界的には、別名「キングオブスポーツ」ヨーロッパでは「スポーツの華」と言われる超人気スポーツなのです。

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清水さんは 日本近代五種の理事を務めるとともに 海上自衛隊第3術科学校の教官をマネジメントする役職にいます。

今でこそ 教官をマネジメントする立場ですが 入隊した頃は 那須の山育ちである事もあり 泳ぎは苦手。50mプールを見た時は、はるか先の向う岸に向かって泳ぐような絶望的な気持ちになったそうです

 

海上自衛隊では 全く泳げない人を「赤帽」と言い、プールで沈んでいても解るように文字通り赤い帽子を被らさせるのだと、笑いながら話してくれました。

50m級のプールは、なかなか無いので体育学校のプールには強豪大学の水泳選手も練習に来ていたそうですが あまりに泳ぎが遅いので 大学生にクールダウンは端でやってくださいと言われショックでした。

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実は このプールが指導方法に気がつき始めた原点だったと清水さんは語ります。

当時、体育学校の訓練(トレーニング)でプールに行くと 「とにかく泳げ」と言われる毎日。

清水さんのように泳げない人に対しても 「さぁ 泳げ、何やっているんだ 頑張れ!」と声が飛ぶ。

そう言われると、言われるほどに 体が固まり沈んでいく。そんな毎日でした。 

それでも 必死に努力して近代5種の選手として水泳の実力も 満点が100%とすると90%はできるようになり、他の競技で挽回することで ナショナル選手になる事ができました。

それでも あの時、「何やっているんだ!」 ではなく 他の声かけであれば、、、、。

「頑張れ!」はなくて、「どうすれば体が浮くのか」を教えてくれていたら、、と今でもそう思うのです。

今、自衛隊に入隊する若者は運動経験が少ない人が多い。

その中で海上自衛隊員としての必要な体力・技術を習得していくには、指導者は指示だけではなく、「モチベーションをあげる言葉がけ」、「潜在能力を引き出す為の知識」を持っておくべきだと思っています。

上司、コーチとしての上からの命令だけでは うまく行かない。自分の体験でもそう思う。

指導者の意図が相手に伝わらないのはなぜか?

そこで清水さんは、放送大学で 教育心理学を学んだんです。これまで実地で「教える技術」は解ったけれど、それ以前に知っておかなければいけない事がある。そう思ったからです。

今回 研修に参加して、まさに今 自分達に足りないものはこれだと気づかされました。海上自衛隊には 近代五種を含め体育的技術を指導するノウハウは沢山あるけれども「自分で考えさせる指導法」「目標を自身で自覚して行動させる指導法」を加えていく事がよりベターで必要だと思います。

近代五種は、タイムスポーツ。

1日に5種目、競技ごとに自分で意識を切り替えたり、アクシデントが起きた時 自身で判断して対応できるようにならなければ、判断の遅れがそのまま各競技に数秒の遅れを作り出し、ロシア、ハンガリー、中国、韓国には勝てないんです。

そして、もう一つ世界に勝つ為には 選手個人の力だけではダメなんです。1日に5競技を1人でやっていくと、途中経過としての自分の順位、タイム差、相手の心理等がわからなくなります。

また、競技の移動等 環境をデザインしていく事にも、コーチ、スタッフの協力が必要になるのです。

コーチ、スタッフ、チームとして信頼関係を強くしていかないければやはり、世界には立ち向かえません。

清水さんは 世界に勝つ為には「選手自身の考える力」と「チームとの信頼関係」が必要である事を熱く語ってくれました。

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最後に 「指導者とは?」 という問いに対して

一番は 指導者は選手の延長ではない。

選手時代の経験は大事だが、それを理論化して 整理整頓し、自分の指導者としてのビジョンを持つ事が必要である事。

選手は自分と同じではないことを理解した上で、「この選手には何が必要なのかを理解する事」、「選手が何をしたいのか察する事ができる事」、何より、「選手自身が自分の目標を話す事ができるように指導する技術」を習得する事が大事だと思います。 

そして

できれば 近代五種協会 や 海上自衛隊内で 今回のスポーツコミュニケーションBASIC 1 研修のような話(情報)を広げていきたいと思います。

とそう話してくれました。

日本スポーツコーチング協会は 清水さんと 近代五種協会をこれからもサポートしていきます。

これからの 清水康さんの活躍と近代五種がますます人気が出ることを期待しています。

/インタビュー:詫摩浩一  カメラ:詫摩世都子

54259<お知らせ>

第58回近代五種全日本選手権大会の開催について

2018年10月30日(水)~11月2日(金)に、

第58回近代五種全日本選手権大会が開催されます。

東京オリンピック出場のためのナショナルチーム選考対象大会であり熱い戦いが繰り広げられます。

会場は、

水泳・フェンシング:武蔵野の森総合スポーツプラザ

レーザーラン:味の素スタジアム西競技場

馬術:東関東ホースプロジェクト

です。

入場は無料です。

<近代五種ルール>簡略バージョン

フェンシング、水泳、馬術の合計得点を 秒換算して コンバインド(ランニング+射撃)上位選手からタイム差でスタート、射撃とランニング(800m)を交互に4回 マトはそれぞれ5回命中させることが必要で 命中しなければ次に進めない(50秒でリスタート)ゴールした順番が最終順位となります